2005年2月に京都議定書が発効し、2008年から始まる第一約束期間が目前に迫るにもかかわらず、わが国の2004年度CO2排出量は基準年(1990年)比で約11.5%、家庭部門(エネルギー起源)に限れば約30%と大幅な増加となっている。住宅におけるエネルギー消費に起因するCO2排出の有効な抑制策を講じるには、その実態を正しく把握することが不可欠である。本研究では、わが国における住宅内エネルギー消費の実態を包括的に捉えることを目的として、全国の数千の世帯を対象に、電気・ガス・灯油等のエネルギー消費量、住宅、住まい方、環境意識などに関する計4回の実態調査を行った。
前報では、うち第1,2回目調査までの年間エネルギー消費集計結果等に基づき、地域、住宅種類、世帯構成、環境意識などとエネルギー消費との関係の概要、世帯間のエネルギー消費のぱらつきなどについて報告した。本報では、4回全ての調査結果を整え、継続して得られた2年分のエネルギー消費データに基づき、年次比較、種々の要因とエネルギー消費の関係、多変量解析による各要因の寄与度の分析結果などについて報告する。
我が国の住宅内エネルギー消費の最近の実態を把握するため、2年間にわたる全国規模のアンケート調査を行い、その分析結果に基づき、
- 全国の世帯平均は38〜40GJ/(世帯・年)であること
- 寒冷地(北海道、東北、北陸)の消費量が多く、冬期の灯油消費量が地城差の多くを形成していること
- ガス・灯油は全ての地域で冬期に最大となるが、電力は寒冷地を除き、夏期と冬期に同程度の消費量の増加が確認されること
- 全国平均では、集合住宅におけるエネルギー消費は戸建住宅の6割程度であること、かつ集合住宅は戸建住宅に比べ地城差が著しく小さいこと
- 暖房に関する項目を併せても、全体的に省エネルギー行動に協力的な姿勢が見られ、省エネルギーに努めている世帯ほど協力的であるが、給湯、特に入浴関連の項目に関しては協力を期待しにくいことなどを確認し、更にこれらの結果を包含し、
- 各世帯の1,2年目のエネルギー消費量は同様の傾向となること
- 一人当たりのエネルギー消費量は世帯人数の減少に伴い大幅に増加し、単身世帯は4人世帯に比べ、総消費量で約1.5倍、中でも電力消費が約2.0倍と特に大きいこと
- 省エネルギー実行度がエネルギー消費量に及ぼす影響は大きいこと
- 意識調査の際に多くの世帯が協力的な姿勢であったにも関わらず、省エネルギーにつながる行動に関しては、6〜8割が変わらないと回答しており、省エネルギー行動を行うことが容易ではなく、給湯、特に入浴関連の項目に関しては協力を期待しにくいこと
- 統計手法を用いて各項目の寄与度について分析を行い、「地域」「世帯人数」「保有機器台数」「省エネルギー実行度」の影響が大きく、逆に「延床面積」「世帯年収」の影響は小さいこと
などを示した。
- 論題
- 全国規模アンケートによる住宅内エネルギー消費の実態に関する研究 影響を及ぼす要因に関する分析その2
- 著者
- 井上隆, 水谷傑, 他
- 掲載誌
- 日本建築学会環境系論文集, No.606, pp.75-80,(社)日本建築学会 ( 2006年8月 )