我が国においては、エネルギー起源CO2排出量が総CO2排出量の94.3%を占めており、CO2排出量を削減するためにはエネルギー消費量を削減することが効果的である。我が国全体の2003年度におけるエネルギー消費量は、1990年度に比べ19.4%増加し、特に、民生家庭部門では26.0%増加している。京都議定書の第一約束期間である2008〜2012年に自助努力による削減目標の達成は困難であることが予想され、今後継続的なエネルギー消費量の削減が急務とされている。本研究では、住まい方まで含めた近年の住宅内エネルギー消費実態の把握を目的とし、全国数千世帯にエネルギー消費量、建物条件、世帯構成、住まい方、意識、等に関するアンケート調査を行った。既報では、エネルギー源別に分析し諸要素、ばらつき等との関係について報告した。本報では、用途毎のエネルギー消費量及び住まい方を含めた諸要素との関係について分析を行ったので報告する。
我が国の住宅内エネルギー消費の最近の実態を把握するため、2年間にわたる実績データに基づき、各用途のエネルギー消費量及び住まい方を含めた諸要素との関係について分析を行い、
- 各用途のエネルギー消費量は、全国平均では年間世帯当たり給湯16.8〜16.9GJ、暖房8.2〜8.6GJ、冷房は0.7〜0.9GJであること、世帯間のばらつきは大きく、特に暖房は給湯に比べなお大きいこと、給湯は暖房に比べ年毎のばらつきが小さいこと
- 給湯については、年間消費量の地域差は比較的小さいこと、各地域の最大月/最小月は2.1〜3.2倍(1,2年平均)となること
- 寒冷地を除き暖房期間は冷房期間に比べ2倍程度となること、戸建の暖房期間は集合に比べ約0.5ヶ月長いが、冷房期間では戸建・集合による明確な差は認められないこと
- 暖房使用状況時刻推移は朝と夜にピークが見られ、冷房使用状況時刻推移のピークは夜にのみ見られること
- 集合住宅の位置と暖房用エネルギー消費量に関係は見られるが、冷房用エネルギー消費量とは明確な相関は見られないこと
- 各用途のエネルギー消費量と住まい方に明確な相関が見られること
- 省エネルギーに努めていると回答した世帯は使い方が倹約的、かつエネルギー消費量が少ないこと
- 地域、世帯人数を限定しても総エネルギー消費量のばらつきは大きいが、暖房用エネルギー消費量の多少と満足度に明らかな相関は認められないこと
などを示した。
- 論題
- 住宅内における用途別エネルギー消費と住まい方の実態に関する研究 ~アンケート調査に基づく分析~
- 著者
- 水谷傑, 井上隆, 他
- 掲載誌
- 日本建築学会環境系論文集, No.609, pp.117-124,(社)日本建築学会 ( 2006年11月 )