家庭部門における行動変容を通じた省エネルギー施策は米国を中心に欧米諸国で一般的になりつつある。中でも家庭にエネルギー使用状況等の情報提供を行うOpower社のホームエネルギーレポート (Home Energy Report:以下、HER)は、米国を中心に実施事例が多く、平均で1.5~3%程度の省エネルギー効果があることが明らかになっている。一方、我が国においてはHERの大規模実証は行われていなかった。このような中、経済産業省は日本におけるHERの効果を検証するため、北陸電力管内の一般家庭4万世帯(介入群2万件、対照群2万件)を対象に、ランダム化比較試験(RCT)による日本初の大規模実証試験を実施した。
本調査の目的は、HERによる情報提供が日本の消費者の省エネルギー意識向上や省エネルギー行動の促進、エネルギー消費量に与える影響を検証することである。日本の家庭は米国と比較して世帯あたりの電力消費原単位が半分以下と少なく、また東日本大震災以降は自主的な節電対策が大きく進んだことから、省エネルギー効果は米国と比較して小さい可能性が予想される。一方で、日本人は社会規範に従う傾向が強く、HERの特徴である他世帯比較の影響を強く受けることも予想される。
本調査では事前調査として、HERのサンプル版を用いて消費者の反応を把握するため、年齢・性別・世帯構成等の異なる8グループを対象としたフォーカスグループインタビュー調査を実施した。次に実証試験では、北陸地域の4万世帯をランダム割付により介入群と対照群に分類し、介入群には冬期の2ヶ月間(2015年12月~2016年1月)実証用HERを送付した。実証用HERの効果検証では、省エネルギー意識・行動の変化を検証するため介入群・対照群の計1,500世帯を対象とした電話アンケート調査を実施し、省エネルギー効果を検証する、調査対象世帯4万世帯の電力消費量を比較分析した。本報告では本調査の結果を報告するとともに、諸外国におけるHERの類似事業の結果と比較することで、本実証試験の結果を考察する。
- 論題
- ホームエネルギーレポートによる消費者の意識・行動の変容と省エネルギー効果:日本初のホームエネルギーレポート大規模実証試験から
- 著者
- 平山 翔
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2016, 2016-9