日本の家庭部門の省エネルギー政策では,住宅建築時に省エネルギー基準を遵守することが求められている他,家電機器等の効率改善を求めるトップランナー制度が施行されるなど,ハード面での法整備は着実に進んでおり,世帯あたりのエネルギー消費原単位は改善傾向にある.
一方で,同じような地域・世帯属性でも環境保全行動の実践度が高い世帯は低い世帯に比べて3割もエネルギー消費量が多く,実際のエネルギー消費は居住者の行動によって大きな差が生じることも分かっている(図1).いかに住宅の断熱化や機器の効率化政策で効率の底上げを進めたところで,日々の行動の意思決定時に選択の余地がある限り,実際のエネルギー消費量に差が出るのは当然である.
そこで,行動や意思決定時にナッジ(nudge: ヒジで軽く突くこと)と呼ばれる”ちょっとした気付き”を与えることで省エネルギーを促進しようという取組が近年拡大してきており,欧米では施策に反映されつつある.本稿では欧米の事例や最近の日本における動向を紹介したい.
- 論題
- 行動変容と省エネルギー (特集 民生部門の省エネルギーとその促進策)
- 著者
- 平山 翔
- 掲載誌
- エネルギー・資源 = Energy and resources 36(3), 162-166, 2015-05