ソーラークリニック

「基準発電量」のむずかしさ


性能向上と格差


ソーラークリニックでは、2001年のサイト開設以降、毎月、太陽光発電量のベンチマークとして「基準発電量」を公表してきた。 基準発電量の算定では、総合損失率を30%(システム出力係数を0.7)と設定してきたが、この10年間に太陽光発電の性能は向上し、 また、電池の種類による差も、無視できなくなってきた。


発電指数からシステム出力係数へ


近年の性能向上を考慮して、総合損失率を20%(システム出力係数を0.8)に変更することを考えたが、2,500件を超える登録発電所に、個別に提供している基準発電量の算定方法を、途中で変更することは好ましくない。 登録発電所には、基準発電量を100とした場合の発電実績を「発電指数」として示してきた。基準発電量に等しい(即ち、総合損失率が30%)とき、発電指数が100になる。 総合損失率を20%にすれば、基準発電量は10%以上増えるため、同じ発電量でも発電指数が10ポイント以上低下する。今まで「100」だった発電所が、90を下回ってしまう。

そこで「発電指数」による評価を止めて、パネル面日射量に対する比(数値は「システム出力係数」と同じ)を表示することにした。 ここで問題となるのは、「比」を見ても一般のユーザーには、発電量が適正か否か、判断がつかないことである。 (だからこそ、これまで「比」が0.7の場合を発電指数100として、一応の目安にしてきた。) そこで過去の登録発電所の実績データをもとに、下図のような目安を作成した。 登録発電所のデータを、設置時期と電池の種類(ただし、メーカーから類推した分類であり、厳密ではない)で区分し、集計したものである。 設置時期による区分を見れば、明らかにシステム性能は向上している。また、電池の種類による差もある程度見られる。




留意事項


電池の種類による差は、メーカー間の差でもあり、これまで公表には慎重な姿勢を保ってきた。 詳しくは過去のコラム(メーカー間の発電性能比較)をお読みいただきたいが、 メーカー比較を公表することで、「やらせ」登録を呼び込むことになるのではないか、と懸念したためである。

懸念が解消された訳ではないが、データを分析する限り、今のところ不適切なデータによる偏りが生じている兆候は見られない。 ただし、当サイトの発電ランキングを新聞広告などに使用しているメーカーもあり、今後も慎重に見ていきたい。

もっとも、「やらせ」登録が無視できないほど出てくれば、この「目安」は実態以上に高くなり、「発電量が少ない」 と感じるユーザーが増えることになる。結果として、販売店への相談、クレーム、点検依頼が増加する可能性もある。

[2013.6.9]初稿