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経験から見た再生可能エネルギーへの思い( 第13回基本問題委員会 コメント・メモ)

1,石油代替エネルギーとしての地域エネルギー(1980年~1985年)
・地域エネルギー開発利用調査(1980年度、1981年度)通産省補助事業調査  全国の都道府県で実施(2県のみ非実施)。地域におけるエネルギー消費実態調査を実施するとともに、地域に賦存する地域エネルギー(再生可能エネルギー)の賦存量を調査。これらのデータに基づき、地域エネルギーの利用可能量を推計した。

・地域エネルギー開発利用事業化可能性調査(1981年度より数年間にわたって実施)同上

開発利用調査結果の中から、当該地域において利用可能性の高い地域エネルギーについて事業化可能性を調査した。たとえばわれわれが担当した県では、宮城県において施設園芸における地中熱利用と籾殻を燃料とした石油代替効果などを検討した。また、鳥取県では、畜産団地におけるメタン発酵利用、温泉排湯のハウス栽培の加温熱利用、梨の排袋のペレット化による燃料利用、ゴミ焼却場の廃熱利用、栽培漁業センターの動力を風車で代替利用するなどと言ったフィージビリティー調査を実施した。
この時代にあっては太陽光発電といった利用は検討対象にすらならなかった。まだ夢のエネルギーといった段階だった。また、風車にあっても汎用の製品はなく、すべて特注ベースの価格設定であったため、エネルギー需給の試算では可能性が見られても、経済ベースでは大幅な補助金でもない限りは実現不可能だったことを記憶している。

しかし、この調査が与えた影響はきわめて大きく、これまで地域ベースでのエネルギー需給を都道府県ベースで検討したことや、いわんや再生可能エネルギーという言葉すら全く定着していなかった時代に地域エネルギー(ローカルエネルギーとも俗称された)のあり方を問うた画期的事業だったと思う。  地域でのエネルギー利用を期待するならば、ぜひこのような地域に立脚した地域による検討を行うべきだと考える。

2,地球温暖化対策としての太陽光発電(1997年~2001年)

・次いで私が経験した例では1997年より2001年まで、太陽光発電の利用実態調査がある。東京都と神奈川県の生活クラブ生協と東京電力等による自然エネルギーの利用可能性の実体的な評価を行うといったプロジェクトで「クリーンエネルギー普及調査会」という組織で実施された。
注)クリーンエネルギー調査会:1997年4月、東京電力(株)と生活クラブ生協東京・神奈川の共同事業として、住宅太陽光発電モニター事業(設置事業、計測事業、アンケート、報告会、交流会、現地訪問等)を実施するために設立された。初期調査を経て、設置に至ったのは申し込み376件うち132件である。2001年6月に最終調査報告書を発表し解散。現在CELC(クリーンエネルギーライフクラブ)がデータを引き継ぎフォローアップ調査等を実施中。
このときの設置費用は、新築のケースで99万3千円/kW,既築の住宅では107万3千円/kW,自前で工事・据え付けを行われたケースでは77万1千円/kWであった。
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図 太陽光発電のシステム価格の推移
出典:「平成20年度住宅用太陽光発電システム導入状況に関する調査」一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会  平成21年7月
 

モニターとして参加された世帯に共通していたことは、日頃から高い地球環境問題への意識、対応を通して社会貢献をしたいという考えを持った家庭が多かった。パネル設置後は、主婦を中心に節電意識がさらに高まっている。これは同時に電気以外のエネルギーの節約意識にも影響し省エネ意識全体が高まることにつながった。このような活動を通じて、他の自然エネルギーに対する興味や、エネルギー問題・環境問題の報道についても従来より関心を持ってみるようになったとする世帯が約80%見られた。
パネルの設置に当たっては屋根の形状によっては必ずしも最適な方位(南面し傾斜角30°前後となる)に設置できるケースの方が少なかったことも印象的であった。
現在もモニター事業は自主的に継続されており、われわれも調査のお手伝いをしている。
これらの一連の行動が(財)新エネルギー財団の「第11回新エネ対象審査委員長特別賞」(2006年度)を受賞した。これを記念して一連の活動をまとめたCELC編集「広がる、広がれ、太陽光発電―設置してわかったこと 困ったこと」(株)西田書店 2009年7月10日が上梓されている。大変興味深い内容なのでぜひご一読を推奨する。

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